ふるさと納税の損益分岐点を考える
ふるさと納税、周りに聞いてみても案外やってない人が多いんですよね。
- 「結局、誰が得するのか分からないのが怖い(自分が損しそう)」
- 「確定申告が面倒」
- 「本当はそれほどは得しないんでしょ?」
などなど、理由は色々ですが、共通して「よく分からない」のが一番の原因なんだろうなと感じます。今はふるさと納税推進派の私ですが、最初のうちは仕組みがよく知らなかったので、損するんじゃないかと手控えていましたし。
お得お得と喧伝されているふるさと納税で、損をする場合があるのか?
ふるさと納税をしたくてもためらってしまうこのポイントに、ここではお答えしたいと思います。
1.ふるさと納税の損益分岐点はどこか
年収350万円で大きい子供が二人いるAさんの例
Aさんの例からわかること
自己負担2,000円とは
2.事務作業のボリューム
ワンストップ特例制度
参考:医療費控除の事務量
確定申告する場合
3.まとめ
ふるさと納税の損益分岐点はどこか
こちらで紹介している、ふるさと納税可能額の一覧表の中から、
こちらの2番目に低い金額で考えてみましょう。
年収350万円で大きい子供が二人いるAさんの例
ここで「年収350万円で専業主婦の妻がいて、大学生の子1人、高校生の子1人がいるサラリーマン」を例として調べてみます。仮にAさんとします。Aさんのふるさと納税可能額は5,000円です。
Aさんは、F里町に5,000円のふるさと納税をしました。
返戻率、つまり寄附に対するお礼の品の価格は自治体により様々で、基本的に非公開の自治体が多いですが、良いところで50%くらいです。F里町はどのお礼の品も返戻率50%相当であることを、AさんはHPから確認して寄附をしました。寄附件数が1回で5,000円のため、ワンストップ特例制度を利用しました。
後日、F里町から2,500円分の野菜が届きました。HP通りのボリュームで大満足です。
↓
4月。税務署から3,000円が振り込まれました。寄附した金額は5,000円ですが、自己負担額として2,000円は支払わないといけないため、3,000円となります。
↓
結果、Aさんは5,000円の寄附(ふるさと納税)をして、2,500円分の商品をもらい、3,000円の税金還付を受けました。
Aさんの例からわかること
このシミュレーションから、年間のふるさと納税可能額は5,000円が損益分岐点と考えます。自治体によっては3,000円の寄付金の設定があるところもありますが、これでお礼の品を1,500円分もらっても、自己負担2,000円より下回ってしまいます。5,000円であれば、
- 2,500円の野菜を2,000円で買った。
とも言えますし、
- 翌年の税金を前年に好きな自治体に支払い、野菜をもらった。
とも言えます。
いずれにしろお得です。この5,000円は、どっちみち税金として支払うお金なのです。それを好きな自治体に支払えばお礼がもらえるし、2,000円以外は翌年戻ってくる。
注意が必要なのは、お礼の品の本当の金額は分からない場合も多いため、もしかすると2,000円の自己負担額より同等、あるいは少ない商品だった場合は、確定申告の手間の分、働き損になる可能性があると言えます。
年収325万円、大学生の子1人と高校生の子1人がいるBさんだと
例に出てきたAさんよりさらに可能額が低く、年間ふるさと納税可能額は3,000円です。自己負担額2,000円を引いて1,000円の税金が返ってきます。この場合、2,000円の自己負担に見合う商品があれば、3,000円でもふるさと納税してみる価値はあると思いますが、実際には良くても1,500円の商品しかないでしょうから、残念ながら3,000円の場合はふるさと納税は見合わせた方が良いと思います。
扶養親族の状況で納税額は変わる
ちなみに、年収350万円のAさんも、子供が成長したり奥さんがパートに出るなどして扶養から外れると、ふるさと納税の年間可能額が31,000円まで上がっていきます。年収に変化がなくても、扶養親族の状況で納税額は変わりますので、当然ふるさと納税可能額も変わります。必ず、寄附する前にチェックしましょう。
自己負担2,000円とは
自己負担2,000円というのは、寄附の都度にではなくて、その年にしたふるさと納税の総額に対して設定されています。5,000円でも2,000円、10万円でも2,000円です。
事務作業のボリューム
自己負担2,000円、確定申告かワンストップ特例申請にかかる事務作業の2つが、ふるさと納税にかかるコストと言えます。
ですので、事務作業のボリュームは気になるところです。少額のためにわざわざ確定申告するのは面倒だ。と言う方のために、「ワンストップ特例制度」という簡易な手続きでふるさと納税分の減税申請が完了する制度も用意されていますので、ぜひ活用してください。
ワンストップ特例制度
具体的な手続きはこちらをご参考に。
ワンストップ特例申請は、特例申請の用紙に個人番号カードか通知カードと身分証明書類のコピーを添えて、寄付した自治体に返送するだけで済みます。年間5自治体以下、サラリーマン限定など、いくつか条件はありますが、利用できる方はこちらが作業としては楽だと思います。この場合は、確定申告による所得税還付はありませんので、全額が住民税から差し引かれます。
参考:医療費控除申請の事務量
身近な確定申告に「医療費控除申請」がありますが、こちらの事務量は膨大です。年間で10万円以上支払った医療費が所得から控除されるため、毎年10万円を超えるか確認する必要があります。そのため、毎年医療費の領収書を取っておき、年末が近づくと国税庁配布のエクセルシートに打ち込み、総額を算出します。この作業がなかなか大変です。提出する領収書をパンチして閉じたり、市販薬のレシートを紙に糊付けしたり、面倒な作業もあります。
我が家は毎年10万を超えるか超えないか微妙な場合が多いため、一生懸命作業して総額が10万円行かないとか、控除額が少額だった時のガッカリ感は計り知れません。今年は、おそらく10万5千円程になりそうです。他に確定申告のネタがないと確定申告の書類を作成するか迷ってしまう金額です。
ちなみに確定申告をする場合は、ワンストップ特例申請は利用できません。それまで申請してきた特例申請はご破算になり、確定申告が優先されますので、確定申告が必要になった場合は確定申告をして、ふるさと納税も合わせて申告してください。
確定申告する事務量
ふるさと納税で確定申告する場合は、申告用紙の所定の欄に、年間トータルの寄附金額を記入して、ふるさと納税した自治体から発行された寄附証明書を添えるだけです。私は毎年、所轄の税務署に郵送で提出しています。医療費控除申請に比べれば、すぐに終わる事務量です。税金が返ってくると思えば、3,000円の還付でも十分我慢出来る事務量だと思います。
まとめ
以上の事から、ふるさと納税の損益分岐点は、「年間可能額5,000円」ということで結論としたいと思います。とはいえ、事務量に不安がある方は、まずは1件だけワンストップ特例制度を利用してふるさと納税にトライしてみて、コストを検討してみてはいかがでしょうか。
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